奈良散歩 その34 大講堂と食堂
西塔を出てから、金堂の後ろに建っている大講堂に入った。
大講堂は薬師寺の宗派である法相宗の教え「唯識」を学ぶ場所で、唯識の教主である弥勒如来が大講堂の本尊である。
弥勒如来は、弥勒菩薩が釈尊滅後5億7千6百万年のちに悟りを開かれたときの姿である。
中央に弥勒如来、向かって右に法苑林菩薩、左に大妙相菩薩を従える三尊形式となっていて金堂の薬師三尊像を模したと考えられている。
大講堂の内部には、仏像が生み出される前の仏教文化に由来する「仏足石」と呼ばれる仏さまの足跡を刻んだ石も安置されていた。
また、2003年の再建にあたり彫刻家中村晋也氏の彫像により奉納された「釈迦十大弟子」の像も設置されていて、釈迦の優秀な弟子として苦しい修行を行ってきたその姿が現されている。
大講堂はいろいろと見どころもあったがこのくらいにして、次の食堂に向かった。
食堂は僧侶が斎食するための建物で、僧侶約300人が一堂に会する規模であったことが発掘調査により判明している。

食堂はちょうど特別公開中となっていて、期待に胸を膨らませて食堂内に入った。
創建当初の建物は730年頃に建てられたとみられ、新たに復興した食堂は、建物の外観は奈良時代の意匠を凝らした作りとし、内部は現代技術を活用することで広い空間を確保している。
食堂内には上図のように、ご本尊である「阿弥陀三尊浄土図」を中心に、田淵俊夫画伯により描かれた全長約50mにわたる壁画「仏教伝来の道と薬師寺」が奉納されていた。
正直、そのスケールの大きさに圧倒された。
圧倒されながら、「阿弥陀三尊浄土図」をじっくり見て、ゆっくりと順番通りに壁画「仏教伝来の道と薬師寺」を見て歩いた。
これは旅立ちである。
これは帰帆である。
これはうねびである。
これは平城京である。
唐の都長安と日本の都奈良を結ぶ一筋の道「シルクロード」を頭の隅に置きながら、仏教伝来の道を食堂で楽しんだ。
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