奈良散歩 その69 夢殿への道 Ⅱ
夢殿への道はまだまだ続いている。
広い道の右側に、「おみやげ」と書かれた幟旗を揚げている出店まである。
遣唐使や遣隋使になった気分で歩いているので、右手の土産物屋を眺める気分はさらさらなくて、正面に見える八角屋根の夢殿を目指すのみである。
ここまで来てもなおも心配になったので、念のため右端を通って歩いて行く男性に確認したところ、正面に見える建物は間違いなく夢殿との返事であった。
遣唐使や遣隋使も、目指す国がしっかり見えていても、憧れの国でありかつ憧れの場所なのであるから、僕のように何度も何度も確認したくなっただろう。
フェノロサや岡倉天心によって初めて明治の代に陽の光を当てられた夢殿の救世観世音菩薩(通称夢殿観音)は、聖徳太子の御等身の像と伝えられて長年護持されてきた秘仏であるが、今は春秋のそれぞれ1ケ月ほどの期間だけ開扉されていて、今回の旅では運よく開扉期間と重なって見ることが可能になった、まことに重要で大切な宝物の像である。
フェノロサと岡倉天心による開帳以前は、夢殿観音は非常に大切にされていた仏像で、見るとバチが当たるという言い伝えがあって、寺の方でも絶対に見せなかった秘仏中の秘仏なのである。
そのように大切に扱われていたおかげで、色彩等もそう色褪せずに残って、今の世に素晴らしいお姿を公開しているのである。
遣唐使や遣隋使になった気分で歩いているうちに、どうやら夢殿前に到着である。
東院伽藍の伽藍配置図である。
四脚門から廻廊に入ると、目の前にようやく目指す夢殿の下半分が見えた。
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