ジュンチャンと世界を巡る 第50回はアイルランド

 アイルランドは「ケルト文化とカトリック信仰」という独自の文化が発達した国で、イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ)とは異なる歴史を有していて、支配国であったイギリスが光であれば、この国は長い間イギリスに支配され、百戦百敗の影の国です。


 ヴァイキングの侵攻やイギリスからの移住者により、人種・文化の混合が進みましたが、アイルランド独自の文化は変わらずに残りました。

 隣国であるイングランドに宗教革命が起こってプロテスタントが誕生すると、クロムウェルによる征服が行われてアイルランドの植民地化が始まったのです。
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 その結果、長い間イギリスの植民地として支配され、19世紀半ばには深刻なジャガイモ飢饉に襲われ、多くのアイルランド人がアメリカ新大陸などに移民していきました。


 アイルランドが独立したのは、第二次世界大戦後の1949年のことです。


 この国の旅も、歴史作家司馬さんから紹介いただきます。

 司馬さんはアイルランドへわたる前にロンドンに立ち寄り、夏目漱石が抱いたであろう「明治の悲しみ」について考察したり、シャーロック・ホームズを思い浮かべてチャリング・クロス駅付近を散歩したり、親しみやすくて気分がいいロンドンの街を楽しみました。
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 その後、全市民の約4割がアイリッシュというリヴァプールに向かい、ビートルズのなかにあるアイルランドについて考えます。

 また、英国国教会とカトリックの大聖堂を訪ね、「八百年におよぶ軽侮(イギリス側)と罵倒(アイルランド側)」の関係に思いを致すのです。
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 空路ダブリンに入った司馬さんは、市内の聖パトリック大聖堂で、首席司祭を務めたジョナサン・スウィフトに思いを馳せ、郊外の「ジョイスの砲台」で、ジェイムズ・ジョイスの文学について考察します。

 ダブリン市内及び近郊を3日間見学した司馬さんは、それからゴールウェイ、アラン諸島、ケリー半島などを巡りダブリンに戻る5泊6日の旅をします。


 アイルランド島の西端に近いコングの村では、そこで撮影されたジョン・フォード監督の映画『静かなる男』をもとに、アイルランド人とアイルランド系移民の民族性について考察します。
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 アラン諸島では、記録映画『アラン』などを手がかりに、岩盤だけで土がない過酷な自然の中で生きるということについて考えます。

 さらに、ケリー半島、キラーニィ、ケンメアと回りながら、イェイツや小泉八雲を素材に、妖精大国としてのアイルランドに思いをはせたのです。
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 再びダブリンに戻ってきた司馬さんは、北郊のドロヘダ、ニューグレンジや、南のグレンダロッホなどの旧跡を訪ね、さらにアイルランドの作家たちを思い浮かべ、アイルランド文化の源流について考察を深めていき、アイルランドを代表する大学、トリニティ・カレッジも訪ねました。


 今回のアイルランドの旅は、司馬さんの旅となりました。




 最後に詩人丸山薫の詩集幼年より「汽車に乗って」を紹介して、アイルランドとヨーロッパを終えます。



   汽車に乗って あいるらんどのやうな田舎へ行かう




   ひとびとが祭の日傘をくるくるまはし




   日が照りながら雨のふる 




   あいるらんどのやうな田舎へ行かう




   窓に映った自分の顔を道づれにして 




   湖水をわたり 隧道(トンネル)をくぐり




   珍しい顔の少女(おとめ)や牛の歩いてゐる




   あいるらんどのやうな田舎へ行かう


   


 皆さんは、アイルランドの何処を歩いてみたいですか。


 次回からは、アイルランド人が移民していったアメリカ新大陸の国々となります。

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