五浦釣人 平櫛田中作品

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  これは五浦(茨城県北茨城市)の海岸で、釣りにでかける岡倉天心を撮影した写真をもとに制作したものです。天心は五浦で、日本画の下村観山・横山大観・菱田春草・木村武山などを指導する一方、思索にふけったり、暇をみては釣りを楽しんでいました。

 僧衣にも似た広い袖の着物の上に大きな毛皮をはおり、素足にわらじを履き、支那帽をかぶっている天心の姿の奥にひそむものが田中のイメージに符号し、この像となったのでしょう。

 この像は写真に忠実に作られ、その意味では写実的なものでしたが、写真の選択そのものが田中の眼であり、この選択の卓抜さが、肖像というより、田中のイメージにかなった自由な人間像としての面白さを表出しています。天心がこの竿で院展の俊英たちを釣り上げるという意味が込められています。 

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