金沢紀行 その21 旅の終わり
この道を真っすぐに進んだ場所がその展望場所である。
そこからは浅野川沿いの民家や、ひがし茶屋街を見下ろすことができるという。
寺の展望場所からは、金沢の旧市街地が手に取るように間近に見え、日本文学研究家のドナルド・キーンが絶賛したというこの寺からの落陽の光景が、しっかりと想像できるようないい風景だった。
絶景を楽しんだあとは、また寺の境内に戻った。
これは五幹に分かれた老松で実は三代目の松であるが、この松には天狗が住むといわれている。
泉鏡花の小説に登場してその小説の中に、「この神木に対して少しでも侮辱を加えたものは、立ちどころにその罰を蒙る」と書いてある。
次に、俳人鶴屋句空の草庵「柳陰軒」があった場所に行った。
むろん今は草庵などなく、そこには石碑が置かれている。
その石碑の横に、旧暦7月21日に芭蕉が句空を訪ねた際につくった句が標柱に刻まれていた。
「ちる柳 あるじも我も 鐘を聞く」
この歌には説明もいらない。
このあと宝泉寺を出て、普通の民家の内部を改装し、そこでカフェをやって客も留めているという「おうちカフェ 夢はうす」で40分ほどお茶休憩を取った。
この突き当たりの家が夢ハウスである。
この家のことは何も知らないで、奥様と楽しく旅の話をしたり金沢の話をしたりしながら、美味しいコーヒーをいただいて溜まった疲れを癒した。
奥様は話し上手で聞き上手な方で、時間があっという間に過ぎた。
この辺りの景色が素晴らしいので都会から引っ越してきたという奥様の話だったが、ネットで調べると、海外経験が豊富なご主人は今現在大学の先生をされているというお宅とのことである。
お料理上手の奥様とおもてなし上手のご主人で経営する、卯辰山の中ほどにある隠れ家のような素敵なオーベルジュ(主に郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストラン)を最後に、「金沢紀行の旅」を終わりとする。
この記事へのコメント