秋田県散歩(2015年の旅)その11 絶景の象潟九十九島島めぐりコースを歩く
芭蕉が酒田から雨の降りしきる中を象潟の町に到着したのは1689年6月16日(陽暦8月1日)のことで、翌日は一転晴れ渡って波静かな潟に九十九島が浮かび鳥海山が秀麗な姿を現した。
芭蕉はこの旅のクライマックスとも言える一日を迎え、九十九島の絶景の中に我が身を置いたのである。
故熊谷能忍住職は、おくのほそ道関連の書の中で、「芭蕉の人気は衰えることがないのです。この寺に来て70年経ちますが、5年に1度は息を吹き返す。訪ねて来られる方は、雨が降ったといっては喜び、晴れたと言っては喜んで、ここで一日過ごしていかれます。」と言っている。
象潟を訪れる人にとって、天候はどうやら関係がないのである。
芭蕉の句の中でも一二を競う程有名な「象潟や雨に西施がねぶの花」を頭に浮かべて雨の象潟を歩くのも悪くないなと思ったが、実際は五月晴れの中を、これから「象潟九十九島 島めぐりコース」に沿って歩いて行く。
この大きな案内看板が、蚶満寺の入口付近に出ていた。
もっと具体的に、コースとコース内に点在する島を示したのが上図である。
まず、駒留島へ向かって出発である。
正面が駒留島で、真っ直ぐな道が一直線に島まで続いている。
この風景に、構図が似ている東山魁夷の有名な日本画作品「道」を頭の中に、すぐに思い浮かべた。
魁夷の作品も象潟の風景の中ではなかなか勝てない、そんな絶景に継ぐ絶景の中を、風景を一つずつかみしめながら歩いて行く。
ここは駒留島と弁天島の中間くらいの地点で、水田の奥の一本松と鳥海山の絡んだ風景が見事である。
ひとつ俳句でもひねってみようかとしばらく考えたが、出るのはため息ばかりで、僕はまったく俳句の才能に恵まれていない。
しばらく歩いて、弁天島から九十九島の奥の方の島々を眺めると、こんな風景が広がっている。
このあたりで午前中の渓流釣りの疲れが出てきたのか足が急に重くなってきたので、島全部をまわるコースを断念し、近道コースを通って帰路につくことにした。
まずますの絶景と思われるところで、松尾芭蕉と司馬遼太郎の双方を心に思い浮かべながら記念写真を撮ったが、時間は午後4時頃となっていた。
さらにだめ押しとしてもう1枚、水田に浮かぶ逆さ鳥海山を撮影して、今夜の宿である海苑蕉風荘へ向かった。
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