探険家の歴史 第2部 アマゾン河の旅 その3 サンタレンにて-ツクナレを釣る
サンタレンはベレンとマナウスの中間に位置する人口25万人の都市で、アマゾン流域では第三位の大きさを誇っている。
アマゾン河の支流の一つであるタパジョス河に面しており、アマゾン河中流域の日系人の多い都市として有名で、作家の故開高健が『オーパ!』執筆の基地とした街でもある。
歴史的には1661年にタプイス族が住んだのがサンタレンの始まりだとされている。その後ペドロ・テイシェイラによって発見され、アマゾン河とタパジョス河の合流点にイエズス会の宣教場が作られた。
アマゾン河とタパジョス河の合流点↑(青い水がタパジョス河の水)
1758年には宣教場を中心に街は広がり、ポルトガルにある同名の街からとって「サンタレン」と名づけられた。
街は河に沿って連なる堤防の内側にあり、タパジョス河がアマゾン河に合流するあたりは、遠く水平線が見渡せるほど河幅が広く、一瞬ここが海岸であるかのような錯覚を覚えるほど。
日系人経営の河辺のバーのテラスで河風に吹かれつつ冷たいビールを飲んでいると、はす向かいでスナックを食べていた娘たちが熱いまなざしでこちらを見ている。女主人の日系人のおばさんが「セニョールにキスしたいんだろう?」と彼女達をからかった。
サンタレンはアマゾン流域では恋の街として有名で、SF作家の田中光二はその著書「アマゾン漂流」の中で、この町を「恋の街」と表現していたが、ここでは男女の「情事」が三度の食事と同じくらい日常的で、男女ともゲーム感覚でそれを楽しむということだ。
僕は田中光二の書いた世界を思い出しながら、そのセニョリータたちに英語で声をかけ、一緒に飲まないかと気楽に誘った。
サンタレンの夕焼けは、この世のものとは思えないほど美しく、僕は一日でこの街を気に入った。
ところで、サンタレンはガリンペイロ(金堀人)たちの町でもある。タパジョス河では川底に砂金が取れ、ガリンポ(金採掘場)が沢山あるが、そこは無法地帯であり、白昼に人殺しが日常茶飯事。
西部劇の世界のように二丁拳銃を下げた男たちが、昔はサンタレンの街を闊歩していたという。
今でも、ガリンペイロ(金堀人)は昔ほどではないが沢山いて、果てのない夢を追っている。
ガリンペイロ(金堀人)たちは、大学出の男が1ケ月で得る収入を、1週間くらいで稼ぐのである。
だが、金の精製に使う水銀(2000トンともいわれる量)がサンタレンのタパジョス河に流れ出し、水俣病と同じ症状を引き起こし、深刻な環境問題を引き起こしているという。
僕はこの街で、釣りの前夜祭のつもりで、さきほどの娘たちを誘い、古い家並みの残る街の小さなレストランに入った。
ここで、開高健絶賛のツクナレのスープと、鱗のある世界最大の淡水魚、ピラルクーのフライを頼んだ。
ツクナレは、ピーコックバスのことで、ブラックバスやスズキに似ている。
コリアンダーの葉が入ったスープは、香り豊かで絶品。
ピラルクーのフライも、厚みのある味で、敢えてたとえれば濃厚な鯛と平目を合わせた味とでも言おうか。忘れられない逸品だった。
そして、今回の釣りのターゲットとなる魚は、ツクナレ。
ツクナレは、学術的にはシクリット科というカテゴリーに属す、シクラ属の(Cichla属)魚である。学術会でもいまだに、しっかり種別されておらず、混乱を呼んでいる。現在これがこの種であると明確にされているものは2~4種にすぎない。
大河タパジョス河↑
ツクナレは全てのアマゾン流域にいる。そして、タパジョス河の源流には1m程のツクナレアスー(アスーはインディオ語で大きいの意味)がいるとのことで、その源流の湖であるラーゴ・グランジ湖で、ツクナレ釣りにチャレンジした。
すぐ当たりが来た。
なかなかのファイトで、恐ろしい引き込みでラインを信じられないようなスピードで奪い取っていくかと思えば、逆転してボートの下に潜り込む。左に走ったと思った瞬間右に走ってジャンプする。
倒木、流木に巻き込まれないように誘導しながら、僕はバス釣りに使っていた愛用のワームで、40cmくらいのツクナレベルメーリャ(赤)を釣り上げた
ここで、ツクナレに関する物知り問題です。
以下の中で一つだけ間違っているものがあります。
番号でお答えください。
① アマゾン流域では9月~11月が、この釣りのベストシーズン
② 共通する特徴として、尾鰭の付け根の部分に白く縁取られた黒い斑点が一つ存在する。
③ ツクナレソウル、ツクナレアスー、ツクナレアマレーロ、ツクナレワイルドは全て実在する。
次回は、いよいよマナウスです。 「再見()ザイ ジエン」
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