ガルシア・ロルカの『ジプシー歌集』から夢遊病者のロマンセ

ラテンアメリカは大航海時代のスペイン、ポルトガルに発見され植民地化されて今日に至っているので、良かれ悪しかれ、この両国の影響を今でも引きずっている国々がほとんどである。
この両国の好みがラテンアメリカ人気質にも反映して、ロルカはラテンアメリカ人には人気のある詩人である。
彼は、多芸の人で音楽家、ピアニスト、画家等も兼務し、その才能を発揮した。
今回紹介するロルカの『ジプシー歌集』は彼の一番有名な詩集で、当時はAKB程度の人気を誇り、スペイン全土で、連日最高売上記録を更新したという。
ジプシーは北インド起源の移動型民族で、一般にはヨーロッパで生活していて、「エジプトからやって来た人」という意味の「エジプシャン」の頭音が消失した言葉である。
 

ロルカの故郷であるグラナダには大勢のジプシーが生活していたので、グラナダやマドリッドではとりわけ絶賛され、普段詩を読まない人々にも巷で朗読されるほどだった。
 この「ジプシー歌集」はボードレール『悪の華』、ランボー『地獄の一季節』などと並び世界中に研究者を多く擁しているという。
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『ジプシー歌集』から代表作

夢遊病者のロマンセ


緑色わたしの好きな緑色。      Verde que te quiero verde.
緑の風、緑の枝よ。           Verde viento. Verdes ramas.
海の上には船。             El barco sobre la mar
山の中には馬。             y el caballo en la montana.
腰には影をおき、            Con la sombra en la cintura
娘には欄干で夢を見る。        ella suena en su baranda,
緑の肉体、緑の髪、          verde carne, pelo verde,
冷たい銀色の眼、            con ojos de fria plata.
緑色わたしの好きな緑色、       Verde que te quiero verde.
ジプシーの月の下で           Bajo la luna gitana,
物みな娘を見つめているが、      las cosas le estan mirando
娘にはそれらを見ることができない。 y ella no puede mirarlas.

緑色わたしの好きな緑色。
大きな霜の星々は
影の魚をつれて来るが、
魚は夜明けの道を開く。
いちじくの木は
枝のやすりで風をこすり、
泥棒猫の山は、
とがった刺をさかだてる。
しかし、誰が来るのだろう? そして何処から……
娘はなおも欄干で、
緑の肉体、緑の髪
苦い海の夢を見る。
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