山女釣り師の聖地 「内山節の上野村」その1

 信濃川の源流を訪ねる旅は終わり、2002年7月31日、旅の2日目はいよいよ山女釣り師の聖地「内山節の上野村」への旅である。

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 7月30日午前7時10分、朝飯を食べるとすぐ宿舎の金峰山荘を発ち、上野村へ向けての旅が始まった。

 早朝の川上村を昨日のルートとは別のルートで走り抜けた。

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 川上村はまさしく高原野菜の村で、なだらかな丘陵地帯にはレタスをはじめとして鮮やかな高原野菜の畑が点在していた。

 昨日、宿舎の夕食で食べたレタスは、味音痴の僕にもその美味しさが分かるみずみずしい食材だった。

 北海道の富良野を思い出すような風景を背景に、愛車レガシーは快調に信濃路を行く。

COSMO石油の給油所が見えたので、旅人の用心深さも手伝って、常時ガソリンを満タンにしておこうと思い立ち、車をスタンドに入れた。

ガソリンを入れると、次の用事は釣り餌の購入である。

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 昨日は、夕まずめに金峰山川に出てテンカラで誘ってみたが、魚の気配すら感じなかった。

 ただ、宿の前で出会った釣師の2人組が「先週ここで釣った岩魚ですが・・・・」と解説して、デジタルカメラで写した写真を見せてくれたので、宿の前の金峰山川には岩魚が住んでいるということが確認できた。

 餌を持ってくれば釣れたかもと悔やんだが、後のまつりである。

 昨日の失敗を繰り返したくないので、宿で聞いた小海駅の釣具屋で餌を購入することにしていた。

 餌はもちろん、万能エサのミミズ、自信のある釣り方と餌で勝負することにした。

 少しずつ、内山節の世界と彼の聖地が近づいてくる。

 上野村へ行くこと、それは僕にとって長い間の夢だった。

 哲学者にして上野村浜平の農民である内山節、彼の著書は6冊購入した。

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 山里の上野村での農耕生活のかたわら、山里の川で山女釣りを通して思索する「行動的哲学者」が内山節である。

 彼の、「釣りをしつつ哲学する、または哲学しながら釣りをする渓流釣りスタイル」には、彼を知った最初から心が惹かれ、僕と波長が合うとすぐ感じた。

 その彼の、思索と釣りの生活舞台が上野村であり、これから目指す目標の場所である。

 小海駅の釣具屋は簡単に見つかり、昨日会った2人の釣師から聞いたぶどう峠越えの道を目指し、小海村から北相木村へ車を進めた。

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 北相木村に入ると絶好と思われるポイントがあちこちに有ったが、降車して釣りをせず、一直線に峠道へ向かった。

 峠下のおじさんに上野村までの時間を聞いたが、四、五十分はかかると教えてくれた。

 峠道はおじさんの教えてくれたとおりだんだん狭くなり、道も九十九折状態になって来た。

 レガシーの性能が試されそうな山道である。

 ほとんどセカンドギアのままで、ハンドルを右左へ目まぐるしく回転させる。車がカーブするたびについでに身体も傾いてしまうのは、かなりの怖さを感じているせいだと、自分で自分を納得させた。

 ハンドルを握る手は冷や汗状態で、汗がジワッとにじみ出てくる。

 20分程心臓を痛くして、ぶどう峠の最高点に到着した。

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 ここが、長野県と群馬県の境界になっており、見晴台もあった。

 メジロアブが音を立てて飛び交っていたが、車を出て5枚~6枚の記念写真を撮った。

 7月30日午前9時半頃のことである。

 これから先は上野村、内山節の世界である。

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