耽羅紀行(済州島の旅) その28 シュリの丘到達
オルレ道を進んで行く。
ツアーの女性客たちが歓声を上げているので近づいていくと、グミが鈴なりになっている光景に出くわした。
そのうちの何名かの人達がグミを口に入れて食べていた。
「酸っぱいけど美味しい、あなたも食べてみたら・・・・」
僕も彼女たちに誘われ、グミを口に頬ばってみると、幸せな感覚が広がり、済州島の神に歓迎されているような気分になった。
グミ林を抜けると、また一気に視界が広がり、目の前には紺碧の海と気持ちの良い整備されたオルレ道が続いていた。
このオルレ道をしばらく行くとベンチがあり、眼前に広がる紺碧の海の絶景を堪能できるようにベンチが数個置かれていた。
各自勝手気ままにここで小休止し、それからまた左手に紺碧の海を見ながら、オルレ道を歩いて行く。
済州島名物の菜の花の大群が咲いている林で、各自記念撮影をしたりしながらまたしばらく行くと、小公園のような一角があり、ようやくシュリの丘に到達と喜んだ。
が、まだシュリの丘ではなく、インコなどの小鳥や穴熊などの小動物を飼っている小さな動物公園だった。
ツアー客一行はここでも小休止、動物や小鳥たちと触れ合ったり、眼の前に広がる絶景にしばし見とれていた。
またぶらぶらとオルレ道に戻った。「この菜の花畑を越えると、そこがすぐシュリの丘です。」とヤンガイドが僕等の方を見て大きな声で言った。
オルレ道の右手は一面の菜の花畑となっていた。
例年菜の花は2月末頃から咲き始め、僕が旅する4月中旬頃が菜の花の最盛期となり、春爛漫の時期に菜の花の造る絶景の中を旅してみたかった夢は、やっとここで叶えられた。
そしてシュリの丘到達、ここは「韓国映画シュリ」のロケ地で、そのラストシーンに使われた場所。
海を見下ろすベンチには、二人の女の人が海に向かって並んで座っていた。
ヤンガイドが、「韓国映画シュリ」のラストシーンにそっくりだと言って、映画の説明をしてくれていたが、残念なことに僕は「韓国映画シュリ」を見ていなかった。
日本に帰ってからシュリを見たが、ラストシーンはヤンガイドの説明と違って、男と女が並んでベンチに座っていた。
「韓国映画シュリ」は韓国に潜入した北朝鮮工作員と、韓国諜報部員との悲恋を描いたドラマで、北朝鮮工作員と韓国諜報部員との壮絶なアクションシーンが凄かった。
韓国では1999年2月13日に公開され、韓国国内で観客動員数621万人という当時の記録を樹立、一種の社会現象を巻き起こした映画である。
映画のタイトルとなった「シュリ」という魚は、南北朝鮮の国境を流れる川に生息する淡水魚の一種で、南北朝鮮の不幸な歴史の象徴として使われた。
シュリの丘から見る済州島の海は、朝鮮半島の不幸な歴史など全く関係ないように、ひときわ美しく輝いていた。
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