「オホーツク街道」の旅 その33 北海道立北方民族博物館の見学
次に、天都山の山麓にある北海道立北方民族博物館の見学である。
北方民族博物館は、北方地域に生活する民族の文化と歴史を研究し、あわせてひろく道民のこれら民族への理解を深めることを目的として1991(平成3)年2月10日、東部オホーツク海沿岸の網走市に開館した。
北方地域や北方民族を対象とする日本では唯一の、そして世界的にも少ない民族学博物館である。
対象とする北方民族とは、オホーツク海・北極海周辺の、北海道、ロシア沿海州、アラスカ、シベリア、北欧等の地域に棲む民族(アイヌ、ニヴフなど)で、これらの地域と民族の文化と歴史の研究や理解促進を目的とする。
世界各地から集めた約900点を、衣食住、生業等のテーマ別に展示し、北方に暮らす人々の文化を紹介している。
入口から入るとすぐに「北方の生業コーナー」で、海獣狩猟文化の展示(アザラシ猟の方法、大型海棲ほ乳類の狩猟)、北太平洋のサケ漁撈文化の展示(様々な漁法)、陸獣狩猟文化(アイヌの狩猟)、トナカイ飼育文化等が展示されていた。
アザラシやセイウチなどの海獣相手の狩猟の道具の展示や、コリャークやオロッコのようなトナカイ放牧文化の展示に特に心惹かれた。
「衣服コーナー」の展示としては、祭儀用の華やかで、色彩が美しいものも心惹かれたが、北方という厳寒の地での生活は、どうしても彼らの生活に適した実用本位のものとなりやすい。
そう言えば、イヌイットの女性の主な仕事は、衣類となる動物達の皮を自らの口で、起きている間中噛み続ける行為だった。
博物館の中央に展示されている「精神世界コーナー」は、やはり圧巻だった。シャーマンの様子、北方の精神世界(日常生活と精神世界、冬の儀式、仮面)、狩猟儀礼(狩猟儀礼、クマ送り、飼いクマ型のクマ送りの様子)、トーテムポール(トーテム・ポール、ハウス・ポスト)等が展示されていた。
この展示の中では、シャーマンとトーテムポールに、特に惹かれた。北方民族はシャーマニズムと呼ばれる原始宗教を精神文化の基調として繋がっていて、このシャーマニズムを司るのがシャーマンである。
シャーマンは北方民族の間では指導者的な立場の人間で、医者であり、詩人であり、歌手であり、賢明な長老であり、知的最高の水準に立つ人物」なのである。
トーテムポール文化は、南東アラスカのインディアンであるクリンギット族やハイダ族が築き上げたもの。
星野道夫の著書「森と氷河と鯨」には、ワタリガラスの神話と共に、このトーテムポール文化も語られている。
展示されているトーテムポールやワタリガラスを見ながら、南東アラスカのインディアン達が造り上げた神話の世界を、時間の許すしばしの間堪能した。
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