耽羅紀行(済州島の旅) その37 たった一つ残ったものが人生の宝物
これからオールインハウスに向かって歩いて行く。
ここには韓国人だけでなく実に様々な国の人々がいて、それぞれの国の言葉で、大声で話しながら通り過ぎていく。
韓ドラは日本のみでなく、東南アジアの多くの国々に輸出されているというが、唯のツアー客の中にも韓ドラに魅せられた人々が大勢いて、オールインのロケ地のような場所で、思い出のワンシーンを楽しんでいるのだろう。
前の奥さんは中国系の顔立ちに見えたが後ろの二人連れも中国系に見え、すれ違いざまに彼らの会話を聞いてみると、やはり中国語で話していた。
中国人、韓国人、その他のアジアの国々の人々をスリわけかき分けしながら前に進んで行く。
主人公のキム・イナがここに来るのはほとんどいい話の時ではなく、別れ話とか行方不明とか不幸な話を持ってくる時で、このロケ地は暗い話のみの展開場面で使われているのだが、唯一最後の場面だけが救われる話となっている。
そして、オールインハウスへ到着である。この隣にキム・イナが自分の家を立て、「一部屋やるから一緒に住まないか」とキメゼリフを言ったりする場所へようやく到着した。
イ・ビョンホン扮するキム・イナは、全24話の中で紆余曲折を繰り返しながら、最後はギャンブラーとして大成功をおさめる。
しかしギャンブラーで得た富と栄誉を全て捨て、今はその跡も残っていないオールインハウスの隣に建てた自分の家に住むのである。
そこに恋人のソン・へギョ扮するスヨンさんが最後に訪ねてくるのである。
今のキム・イナに残されたものは、教会の隣に立っている自分の家と、これも全てを捨て逃げてここまで来た恋人のスヨンさんしか無くなっていた。
僕はもうこの家しか残ってないがそれでもいいかとキム・イナは言い、スヨンさんは泣きながら彼に飛びつき、二人は寒風の吹き荒ぶ中をいつまでも抱き合っていた、このシーンがドラマのラスト・シーンである。
そして本当のラストシーンは、崖の上に立って海を見つめるキム・イナ一人のシーン。
「今の俺は、ただ一人の人を愛したい。・・・今度の勝負ではきっと俺が勝つだろう。オールイン、今俺は全てをかけて、ただ一人の人を愛していく。」
キム・イナとスヨンさんの名演に拍手を送りつつ、ソプチコジのオールインハウスを後にした。
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