奈良大和路散歩(2016年の旅) その39 長谷寺に入っていく
電車を上手に乗り継いで、これから長谷寺に向かう。
長谷寺駅から坂を下っていき、初瀬川を渡って長谷寺の門前町に入り、長谷寺の入り口までの長いアプローチを歩いて行く。
門前町は食堂や土産物屋が軒を連ねて大賑わいである。
駅から20分ほど歩き、ようやく長谷寺に到着した。
ここから寺に入っていくのであるが、あいにくと正面にある仁王門は修理中で、修理用の覆いで囲われていた。
境内案内図に従って長谷寺を歩いて行くことにしているが、まず修繕中の仁王門を潜って、登廊を上がっていく。
登廊は平安時代の1039年に春日大社の社司が子の病気が治った御礼に造ったもので、399段あり上中下の三段に分かれていて、風雅な長谷型灯籠が天井に吊されている。
長谷寺は山々に囲まれた花のお寺として有名で、登廊の外の庭には様々な色の牡丹の花が咲き誇っていた。
登廊上段下の蔵王堂脇に、紀貫之古里の梅が大切に育てられていて、梅の木の前に彼の有名な歌が書かれた看板が立っていた。
人はいさ 心も知らず 故里は
花ぞ昔の香に にほひける
この歌は古今集に収められ、百人一首にもとられている。
現代語で訳すと、こうなる。
あなたのことやお心はわかりませんが、昔馴染みのこの場所では、梅の花はまさに昔と変わらない香りを漂わせていますよ。
歌の背景を説明すると、紀貫之が長谷寺に参詣するたびに宿にしていた人の家に、しばらく経った後に寄ったところ、その家の主人が「ずいぶんとごぶさたですね。今でもまだこのとおり、宿はありますよ」と軽く冗談っぽく言ったので、紀貫之はそこに立っていた梅の花を折って、「昔から親しんだこの場所では、梅の花は変わらず私を快く迎えてくれている。あなたは昔のままに私を喜んで迎えてはくれないのでしょうか。」と切り替えして詠んだと伝えられている歌である。
いにしえの優雅なやりとりを楽しみながら、長谷寺の本堂に向かって歩いていく。
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