耽羅紀行(済州島の旅) その39 城山日出峰を制覇後のバスの中で
頂上で5分程城山日出峰を制覇した喜びを噛み締めて下山した。
下山道は傾斜度が30度くらいはありそうで、そこから下界へのダイナミックな眺めはなかなかのものだった。やはり、世界遺産の風景である。
下界に近づくに連れ、さらに風景の迫力はアップする。やはり、この山は登りより下りがずっと眺めが良さそうである。
ここで、約束の帰還時間まで残り10分程、どうやら無事天国から下界に戻って来た。
これから昼食のため、咸徳海岸沿いの済州島特産海鮮料理専門食堂に行く。
赤矢印の場所である。
それから赤星印の世界遺産の洞穴である萬丈窟へ向かう。
食事場所までのバスの中で、ヤンガイドが僕らツアー客に告白めいた話をした。
話の要点は、ヤンガイドの高校生になる息子の話と、ヤンガイドのガイドとしての適性の話だった。
ヤンガイドの父親は警察官だったということで、ヤンガイドは子どもの時からその父親に厳しく育てられていたため、性格が男勝りでキツイ性格となったとのこと。
ガイドという職業の場に置いても、善悪をはっきりつける態度と、キチンとしすぎた性格から、お客からの苦情がけっこうあり、いろいろ悩んだという。
本人の自覚があるのでそれ以上僕も言えないが、言う事を聞かないわがままなツアー客は、このガイドと一緒にいる間は音も出なかった。
その悩みを乗り越えて、こうしてガイドをしているとのことで、皆さんに言い過ぎたことがあるかもしれないけれど、この場を借りて説明し、皆さんにわかってもらいたいと話していた。
僕的には、団体旅行だからある程度キツメでないとガイドは出来ないと考えているので、ヤンガイドがいうほどは気にしてなかった。
ヤンガイドの息子の話の方だが、要するに息子の進学問題のことである。
韓国は日本よりももっと過酷な受験勉強が強要されている。
韓国はご承知のように儒教の国で、李氏朝鮮の頃から両班制度という日本の士農工商に似た身分制度があり、特定の階層でなければ官僚になれなかったような時代が、長い間続いた。
戦後の改革を経て、今では誰もが、成績優秀であれば官僚になれる、自分のなりたい職業につける時代になったのだ。
ただ、そのことが今まで低い身分でいた階層に強烈な刺激となり、過度な程の受験戦争を招いている。
韓国の受験生の勉学に使う時間は日本以上だと言われていて、それにかかる費用も莫大なものになる。
ヤンガイドは息子をエリート大学に入れたいのだが、数学が全く出来なく、大学合格に金と時間を使うよりも、エリートを諦めて他の人生を選択させようと、今夜は主人とそのことで話し合う予定となっている。
それで今日は朝からイライラしていると、僕らツアー客にとっては全く失礼なことを平気で言っていた。
個人的な家庭の都合で、お客を頭の中から忘れるようでは、「ヤンガイド、まだまだだね」と、僕は言ってやりたくなった。
バスの中は、ヤンガイドの独演会だった。
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