「街道をゆく」で出会った「日本を代表する人物」 その12 台湾紀行 元中華民国(台湾)総統李登輝のこと

 司馬遼太郎の「台湾紀行」には印象に残る傑物が大勢登場し、「台湾紀行」の格式をグレードアップさせる役割を演じているが、僕が「台湾紀行」の中で特に惹かれたのが元中華民国(台湾)総統の李登輝、そしてもう一人は日本の水利技術者で日本統治時代の台湾で、農業水利事業に大きな貢献をした八田與一である。

 僕の「台湾紀行」の旅を始めるにあたって願ったことがある。

 それは、司馬遼太郎の文庫本「台湾紀行」の中で紹介された、「日本国民時代に日本人として育った台湾人が、日本人よりも日本人的であるというシーンに、1回でも2回でも遭遇したい、そういう機会を持ちたい」ということだった。


 元中華民国(台湾)総統李登輝はそういう旧日本人の一人である。

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 ここで元中華民国(台湾)総統李登輝を簡単に紹介する。

 李登輝(り とうき、リー・テンフェ、1923年(大正12年)1月15日 - )は、中華民国の政治家・農業経済学者。元・中華民国総統(1988年 - 2000年)。コーネル大学農業経済学博士、拓殖大学名誉博士。信仰する宗教はプロテスタント・長老派。

 日本統治時代に岩里政男(いわさとまさお)と名乗っていた。

 蒋介石の息子の蒋経国の死後、その後継者として中華民国の歴史上初めて直接選挙を経て総統となった。


 彼は日本統治時代の台湾に生まれ、日本の教育を受け、日本人として育った台湾人で、終戦の1945年までは内実ともに日本人だった。

 中学・高校時代に鈴木大拙・阿部次郎・倉田百三・夏目漱石らの日本の思想家や文学者の本に触れ、日本の思想から影響を受ける。

 また、日本の古典にも通じており、『古事記』・『源氏物語』・『枕草子』・『平家物語』などを読む。

 日常的に日本文学を多く読み、岩波文庫の蔵書数を誇ったり、日本のオピニオン雑誌『中央公論』『文藝春秋』を愛読するなど、日本語が一番得意。

 それについで台湾語、英語となり、一番苦手なのは北京語で、非常に台湾訛りが強い。
 司馬遼太郎や小林よしのりとの対談も有名で、話し出すと時間を忘れるほど熱心に語る雄弁家でもある。

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 自らを「半日本人」と称する程の親日家で、2009年12月18日に、台北市内で、訪台中の日本の高校生約100人を相手に『日本と台湾の歴史と今後の関係』をテーマに講演した内容は、彼の本質そのままのものである。

 李は講演で「あなたたちの偉大な祖先の功績を知り、誇りに思ってほしい」「公に尽くし、忠誠を尽くした偉大な祖先が作り上げてきた『日本精神』を学び、あなたたちも大切にしてほしい」と述べた。



 誰を念頭に置いているか知らないが、彼は台湾総督府民政長官を務めた後藤新平を「台湾発展の立役者」として高く評価しているという。

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