2012年に旅したオホーツク街道の続き その44 しろばんば後編 

 これから、「しろばんば」の後編を始める。

 洪作が尋常小学校5年生に進級した秋、近隣にある「帝室林野管理局天城出張所」に新たな所長が赴任して来る。
画像1

 所長には2人の子がおり、それぞれ洪作の通う小学校に転入した。
 その子供たち・あき子と公一は村の悪童らから「あき子のアの字はアンポンタンのアの字」「公一のコの字は小芋のコの字」と囃し立てられるが、洪作のみは囃し声に胸を痛めると同時に、姉のあき子に淡い恋愛感情を抱く。

 一方でおぬい婆さんは年々老衰が進み、洪作も次第にそれを悟るようになる。
画像2

 そんなある日、おぬい婆さんは故郷である伊豆半島南端・下田の町へ一泊の旅に出るが、彼女に付き添った洪作は、妾として故郷を捨てざるを得なかったおぬい婆さんの胸中を思う。
画像3

 12月、子どもたちの間では登校前のランニングが流行っていた。
 そんな折、女子を率いて先頭を走るあき子が、悪童が仕掛けた落とし穴に嵌る事件が勃発する。

 これを目撃した洪作は怒りのあまり、落とし穴を仕掛けた張本人を組み伏せ石で殴り倒すが、洪作はこの事件が原因であき子から距離を置かれてしまう。
画像4

 年が明けて間もなく、村には新たな交通手段としてバスが導入される。

 仕事を奪われる形となる馬車引きが小学校の用務員と喧嘩するのを見かけた洪作は、落ち目になって消えるものの運命を悟る。
画像5

 春休み、数年ぶりで沼津のかみきの家を訪れた洪作は、かみきの姉妹・蘭子とれい子の派手な喧嘩に圧倒されるものの、その後で千本松原を歩む道中、蘭子から石川啄木の恋の歌を教えられる。
 都会的な蘭子に引き比べて、自分ら湯ヶ島の子どもは田舎じみている。
画像6

 そんな思いで村に帰り、共同浴場を訪ねた洪作はうっかり女生徒の入浴に鉢合わせしてしまい、激しくののしられ、もう女の子と気安く遊べる歳ではないと悟らざるを得ない洪作だった。

 6年に進級した洪作は、中学受験に備えて本格的な勉強を始める。

 田舎の小学校ながら首席を貫く洪作の家庭教師として、都会出身の教師犬飼があてがわれる。
 犬飼は洪作の成績を見るなり、「遅れている」と吐きすて、洪作は「克己」の言葉を胸に、6時間睡眠で勉強に勤しむのだった。

 一方、犬飼自身も上級進級試験のために勉強を重ねていたが、過労から神経衰弱を併発し、新学期になって間もなく自殺騒ぎを起こす。

 9月の終わりごろからおぬい婆さんは床に寝付くようになり、認知症の症状も現れはじめる。
 一方で洪作は父の新たな任地であり、受験先の中学校がある浜松への転居が決まる。

 いずれ村に一人残されることとなるおぬい婆さんは、会う人ごとに弱音を吐く一方、性格は温厚になっていった。
画像7

 湯ヶ島最後の正月を、洪作はおぬい婆さんや母・七重と共に迎える。

 犬猿の仲だった七重から差し出される雑煮餅を、おぬい婆さんは感謝しつつ口に運ぶ。

 三が日が済んで間もなく、おぬい婆さんはジフテリアに感染し、洪作も高熱に倒れる。

 2日間高熱に浮かされ、熱が下がりかけた3日目におぬい婆さんの死を知らされた。

 熱が下がらず葬式からも遠ざけられた洪作は、おぬい婆さんの死に騒ぎを他人事のように見守っていく。
画像8

 おぬい婆さんと小学校時代を過ごした土蔵を整理した洪作は、浜松へと旅立つ。

 しろばんばの世界をたどりながら井上靖の少年時代に遊んでみたが、機会があれば「雪虫の飛ぶ季節」に伊豆湯ヶ島に行って、この地をのんびりと歩いてみたい。

この記事へのコメント