チリの国民的詩人 パブロ・ネルーダの詩「ぶどう酒」

ネルーダ・ぶどう酒



 1971年にノーベル文学賞を受賞したチリの国民的詩人であり

 反ファシスト活動家でもあったパブロ・ネルーダ

 彼の詩集の中に「ぶどう酒」という詩がある。

 それは大地の恵みを皆で飲み、そして歌おうという、祖国や民衆に思いを馳せた高らかな叫びの詩。


 彼は外交官、政治家でしたが、大衆のために働く詩人としての使命を抱いていた。

 1973年9月11日、反革命軍事クーデターが起こるなか、捕らえられ病死した。



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 まあ、一杯どうぞ!!


 春のぶどう酒……秋のぶどう酒

 仲間よ おれといっしょに テーブルをかこもう

 秋の彼岸の 木の葉の散りかかる テーブルを

  すると この世の大きな流れは

  ざわめきながら 遠のいてゆく

 おれたちの歌ごえから 遠く


  おれは きみのよい仲間なのだ(中略)


  栗の実や 薔薇や

 木の根のやすらぎや 帆船のこころよさを

 仲間よ それらをこそ

  おれは きみと分かちあいたかったのだ


 仲間よ いっしょに歌おう コップがひっくりかえり

  テーブルのうえに 赤い酒が流れるまで

  この蜜は 大地から ほの暗い枝の中をとおって

 きみのくちもとへと やってきたのだ

       (中略)


   
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  ノーベル文学賞受賞詩人ネルータ写真


 握手しよう また会おう

 うんと素朴になって おれのことばのなかに

 裸の草木の発散するものだけを 探してくれたまえ

 なぜきみは 労働者に要求する以上のものを

 おれに要求するのだろう?

 きみはもう 知っているはずだ

  おれが一生懸命に働いて 地下の仕事場を

 つくりあげたのを

       (中略)


 おれたちは ぴりっとする大地の酒をのんで

 歌おう 秋のコップをかちあわせよう

 ギターや 静けさが運んでくるだろう

 愛の歌を 生活のない流れのことばを

 もてはやされる 意味もない歌を

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